2022年11月
「世界の森からSDGsへ ―森と共生し、森とつながる(上智大学出版)」の書評が掲載されました(森林技術誌、2022年11月号)
(以下全文を引用)
「 本書は、21世紀をSDGsの実現を共通命題とする時代と位置付ける。その実現のためには、「森から遠ざかる」時代であった20世紀の文明社会を、「森林と共生し、森とつながる」時代・社会へとパラダイムシフトしていくことが必要だと提起する。著者は、そうしたパラダイムシフト自体が、既に欧米先進地域を中心に、世界各地でおこっていると認識する。
この問題意識と現状認識に基づき、第一篇では、SDGsの実現に向けたパラダイムシフトと森林の立ち位置について、海外での議論を含めた広範な視点から検証がなされる。ここで著者は、従来、生態面・社会面・経済面の持続可能性が同一の地平で重なり合っていた保続生産林業や予定調和論における関係性を、生態系の基盤の上に社会があり、その上に経済があるという重層構造(生態的森林管理・生態的林業の展開)」として捉え直すべきであると強調する。
第二篇では、直接的に「森とつながる」森林でのレクリエーション活動について、アメリカ編とヨーロッパ編に区分してその発展経緯と現状が整理されている。とりわけ、各レクリエーション活動の利用者数、産業規模、健康面等での期待や可能性について、詳細なデータを伴って網羅的に整理されている点は特筆すべきである。今後の日本や他地域における森林でのレクリエーションの意義や可能性を模索するにあたって、非常に有用な整理である。
第三篇では、「森林と共生し、森とつながる」社会を目指すにあたり、世界各地でどのような取組がリアルタイムで行われているかが、具体的に整理される。それらは、森林所有者・管理者に限らずさまざまな主体を組み込んだ協働や、生態系サービスへの支払い(PES)枠組みの構築といった共通点こそ見られるが、総じて地域性を反映した多様なものとなっている。恐らく著者が、この中から読者なりの共通項や適用可能事例を見出していくことを期待しており、その意味では、地域の人間と森林の将来像を描くうえでの事例集・参考書としての性格も持ち合わせている良書である(森林総合研究所関西支所/平野悠一郎)」